交渉というと、心理的駆け引きがものをいう、才能が支配する活動であり、自分のような口下手には縁遠いものだという印象がありました。 しかしながら、本書は「交渉には理論があり、後天的に交渉力は獲得できる」という立場のもと、その基礎的な理論を紹介しています。

もっとも基礎的なこととして、交渉は準備が8割であり、始める前につぎの3つを決めるべきだとあります。

  • ミッション(Mission):交渉の軸となるもの。
  • ゾーパ(ZOPA, Zone Of Possible Agreement)最高と最低の2段構えの幅のある目標
  • バトナ(Best Alternative To Negotiated Agreement):ミッションを達成できなかったときの代替選択肢。

また、これらを定める前後で、違いを取り巻く状況を把握するために、マップやツリーを書いてみることは、状況を俯瞰したり、問題点を分解したりする際に役立ちます。

交渉中、お互いの考えを把握するために、ブレイン・ストーミング、いわゆるブレストを行うことも非常に有効だとあります。 ただし、ブレストをする上で絶対に守らなければいけないこととして、

  • はじめに最後に行うことを決めておく
  • アイデアの批判と評価を混在しない
  • 取りうる選択肢を決める際は、軸を決めて比較し、決定する

などがあります。

相手との長期的な関係を求めている場合、下手な交渉テクニックを使うことはあまり得策ではないそうです。 このような交渉テクニックとして

  • フットインザドア:最初に取るに足らないような要求を提示し、小さなイエスを引き出す、その上で徐々に要求をエスカレートさせていく。
  • ドアインザフェイス:最初に課題な要求を出して相手にノーと言わせ、条件を下げて本来の要求を出す。
  • ニブリング:一旦合意に達した後、相手の気が緩んだところに追加条件を提示し、受諾させる。
  • タイムプレッシャー:アイスブレイクの時に相手の交通手段などを聞き出し、デットラインを把握。その上で交渉の最終条件の提示をそのデットライン近くまで遅らせ、プレッシャーを与える。

などがあります。

最後に、交渉を成功させる秘訣は、決して感情的にならず、なるべく第三者の視点から交渉に臨むことです。 これから社会人になる身として、学ぶべきことが多く書かれていた本書は、ぜひ手元に置いておきたい本だと感じました。