ポートフォリオ最適化

複数の金融商品の組み合わせのことを「ポートフォリオ」といいます。 あなたはAとBを購入する際、そのポートフォリオを調節することで、リスクをできるだけ小さくしながら、リターンをできるだけ大きくしようと思っています。 けれども、「ハイリスクハイリターンの原則」により、それらを限りなく小さくすることはできません。 しかしながら、あなたがもし「望ましいリターン」を決めたときに、「そのリターンを達成し、かつ最もリスクを小さくするポートフォリオ」を求めることは可能です。 このことを「ポートフォリオ最適化」といいます。

この問題を数学的に記述しましょう。 nn個の金融商品を考えます。 それぞれの商品には1,,n1,\ldots,nとラベルが振られているとします。 それぞれの商品のリターンをμ1,,μn\mu_1,\ldots,\mu_nとします。 それぞれの商品のリスクをσ1,,σn\sigma_1,\ldots,\sigma_nとし、それらを対角に並べたものをΣ\Sigmaとします。 つまり Σ=[σ10  0σn] \Sigma = \begin{bmatrix} \sigma_1 & \cdots & 0\ \vdots & \ddots & \vdots\ 0 & \cdots & \sigma_n \end{bmatrix} です。 商品iijjの間の相関係数をrijr_{ij}とし、それらを縱橫にならべたものをRRとしましょう。 つまり R=[r11r1n  rn1rnn] R = \begin{bmatrix} r_{11} & \cdots & r_{1n}\ \vdots & \ddots & \vdots\ r_{n1} & \cdots & r_{nn} \end{bmatrix} です。

それぞれの商品の購入割合(つまりポートフォリオ)をw1,,wnw_1,\ldots,w_nとし、これらを縦に並べたものをwwとします。 あなたはポートフォリオwwを決めることで期待リターンν\nuを達成したいとしましょう。 このとき、ポートフォリオ最適化問題はつぎのように定式化できます。

最小化すべき目的関数は wTΣRΣw  w^\mathrm{T}\Sigma R \Sigma w\ です。これは全体のリスクを表します。

また、制約条件は wi0 i=1,,n, iwi=1, iwiμiν w_i \ge 0 \ \forall i = 1, \ldots, n,\ \sum_{i} w_i = 1,\ \sum_{i} w_i\mu_i \ge \nu です。 一つめの不等式は、かく商品の購入割合が正の値であることを表し、2つめの等式は、購入割合の合計が1であることを表します。 また最後の不等式は、全体のリターンが期待リターンν\nuを上回ることを意味します。

このような最適化問題は、目的関数が変数に対して2次式、制約条件が1次式の形をしているため、2次計画問題と呼ばれます。 一般に最適化問題はその解を求めるのが簡単でないことが多いのですが、2次計画問題は「内点法」「共役勾配法」などと呼ばれる手法で、比較的容易に解を求めることができます。

さて、次回は数値例を使ってこの最適化問題を解いていきましょう。