なぜ分散投資が有効なのか
ここに2つの金融商品があったとしましょう。 それぞれの金融商品は「リスク」と「リターン」という特徴量を持っているとします。 リスクは将来予想される値動きの幅を表し、リターンは将来予想される価値の上昇率を表します。 確率の言葉を使うと、リスクは標準偏差、リターンは平均に対応しています。
経済学の言葉に、「ハイリスクハイリターンの原則」というものがあります。 これは、ローリスクかつハイリターンな商品はあり得ないということを表すものです。 例えば、銀行の定期預金などはローリスクである代わりに、リターンも小さくなります。 一方で、株式などはハイリターンが期待できますが、値動きが読めない分ハイリスクであると言えます。
また、2つの金融商品のペアは、「相関係数」という特徴量を持っているとします。 これは、2つの金融商品がどの程度連動して値動きするかを表します。 例えば相関係数が正の値なら、片方の商品が値上がりしたとき、もう片方の商品も値上がりすることが多いことを意味し、相関係数が負の値なら、片方の商品が値上がりしたとき、もう片方の商品は値下がりすることが多いことを意味します。
投資の世界には「卵は1つのカゴに盛るな」という言葉があります。 これは、金融商品を分散して買うことで、リターンを維持しつつ、トータルのリスクを減らすことを推奨する言葉です。
例えば今、2つの金融商品の片方をA、もう片方をBとしましょう。 Aのリターンは5、リスクは10であるとします。 またBのリターンは10、リスクは20であるとします。 さらに、AとBの相関係数は-0.5であるとします。
ここで、片方の金融商品を買ったときと、両方を分散して買ったときの、「リターン/リスク」を求めてみましょう。 この値は、リスクに対してリターンがどれだけ大きいかを示すもので、大きいほどお買い得ということを意味します。
まず、片方の金融商品を買ったとき、両金融商品とも、リターン/リスクは0.5です。
つぎに、AとBを半分ずつ購入したときのリターンとリスクを求めてみましょう。 ここでAとBそれぞれのリターンとリスクが$\mu_A, \mu_B, \sigma_A, \sigma_B$、相関係数が$r_{AB}$であるとし、また二つの商品を$w_A:w_B$の割合で購入したとき、合計のリターン$\mu$とリスク$\sigma$は $$ \mu = w_A \mu_A + w_B \mu_B, $$ $$ \sigma = \sqrt{ (w_A \sigma_A)^2 + 2(w_A w_B r_{AB}\sigma_A\sigma_B) + (w_B \sigma_B)^2 } $$ として求められます。 このことを用いると、分散投資したときのリターンは $$ 0.5\times 5 + 0.5\times 10 = 7.5 $$ となり、リスクは $$ \sqrt{ (0.5\times 10)^2 + 2(0.5\times 0.5\times (-0.5)\times 10\times 20) + (0.5\times 20)^2 } = 8.660 $$ となることがわかります。
したがって、リターン/リスク=0.866となり、金融商品を分散して買うことが有効であることがわかりました。
さて、つぎに考えたいのは「一番よい分散の仕方はなにか」ということです。
次回に続きます。