入出力線形化

入出力線形化 (フィードバック線形化) とは 非線形システムに、非線形性を打ち消すような入力を加える事で、閉ループ系を線形化する制御法。 安定化が目的ではないので、得られた線形システムに対して線形制御法を適用する必要がある。 利点として 通常の(ヤコビアンを用いる)線形化と違って、近似を用いない 欠点として システムの動特性を全て知っていなければならない その動特性は正方、入力アフィンという形をしていなければならない (拡張可能) 線形化のために大きな入力を加えるため、入力飽和などのあるシステムに適用しづらい などが挙げられる。 入出力線形化 #仮定 今、制御対象が以下の動特性に従うとする。 $$\dot x = f(x) + g(x)u\ y=h(x)$$ $x(t) \in R^n, u(t) \in R^m, y(t) \in R^m$はそれぞれ状態、入力、出力を表す。 $f:R^n\rightarrow R^n$および$g: R^n\rightarrow R^{n\times m} $については特になにも仮定しないが、$h: R^n\rightarrow R^m$は必要回数分だけ微分可能だとする。 このシステムは入力に対してアフィンな形をしているため、そのまま入力アフィン (input-affine, control-affine) と呼ばれる。 入力アフィンシステムは、機械システムなどによくみられる、非常に重要なクラスらしい。 また、今回入力と出力の次元は同じと仮定している。 このことをシステムは正方 (square) であるという。 #線形化制御器 今、 $$u = C(x,v)$$ を設計することで、与えられた非線形システムを$v$から$y$に対して線形にすることを考える。 この問題に対して、いきなりだが制御器$u$を、下記で与えてみよう。 $$u = L_gh^{-1}(x)(-L_fh(x) + v)$$ ここで、Lie微分と呼ばれる記法 $$L_fh(x) = \frac{\partial h}{\partial x} f(x)\ L_gh(x) = \frac{\partial h}{\partial x} g(x)$$ を用いた。...

September 19, 2015

金井壽宏『働くひとのためのキャリアデザイン(PHP新書)』感想

筆者は終始「節目の期間はしっかりキャリアについて考える。それ以外の期間では目の前のことに打ち込み、時には偶然に流される(ドリフトする)ことも必要」という主張に徹する。 なので、この主張を真に理解している人は本書を手にする必要はないと思う。 本書のメインターゲットは就活生とミドル世代の2種類である。 また本書では、これらの層を想定したいくつかのエピソードやエクササイズが紹介されていて、キャリアデザインを「自分の問題」として考えさせる工夫が凝らされている。 個人的に、以下の自己イメージに関するエクササイズに考えさせられた。 自分はなにが得意か。 自分はいったいなにをやりたいのか。 どのようなことをやっている自分なら、意味を感じ、社会の役に立っていると実感できるのか。 それぞれの問いは 能力・才能についての自己イメージ 動機・欲求についての自己イメージ 意味・価値についての自己イメージ を照射しているという。キャリアを意識する上で、避けては通れない質問だと感じた。 また、筆者は本書のはじめに「研究に基づく見解」を披露すると述べており、個人的に「キャリアデザイン」という科学らしからぬ問題に対して、どのような研究が存在するかが興味をもった。 実際には、多数の論者の言葉や考え方を引用するものの、定量的な考察はあまり見受けられず、「研究」という言葉の意味の齟齬を感じた(多分これは僕の考える「研究」があまりに狭義であるため)。 しかしながら、それらの考え方の中には、確かにそうだな、と実感させられるものもあり、キャリアに対する態度を改める必要すら感じた。 例えば、筆者が参加したエンジニアリング産業の社長会に参加した際、ある社長から耳にした言葉と、それに対する筆者の考えなどは、覚えておきたいと思った。 「エンジニアリング産業の海外エンジのプロジェクトなんて、(中略)勘のいいバイタリティあふれる人なら、三十歳を超えるころには、だいたいプロジェクト・マネジメントができるようになる。そのあとは何箇所経験してもいっしょだ」 この発言は、キャリア・トランジション・サイクルというモデルの重要さを説くための例として用いられている。 このモデルは、ロンドンビジネススクールのナイジェル・ニコルソンにより提唱されたもので、 新しい世界に入る準備段階 実際にその世界にはじめて入っていって、いろいろ新たなことに遭遇する段階 新しい世界に徐々に溶け込み順応していく段階 もうこの世界は新しいとはいえないほど慣れて、落ち着いていく安定化段階 の4段階からなる。筆者によれば、このサイクルを螺旋状に上昇させていくことが、キャリアを発達させるために必要なことであり、上述の社長のようなサイクルは、望ましくないのだという(もちろん筆者は、エンジニアリング産業を批判したいわけではない)。 全体を通して、共感できないというか、納得できないというか、そういう記述もあり、それらはひとえに僕に社会人としての経験が不足していることによるものだと思う。 もしかすると、10年後くらいにもう一度読み直すことになるかもしれない。

June 4, 2015

橘玲『臆病者のための株入門(PHP新書)』感想

某有名投資家のおすすめ書籍として紹介されていたことをきっかけに読み始めた。 株そのものに興味があるというよりも、日々ブログや経済ニュースで目にする用語を理解したかった。 全体として初学者にもわかりやすく、経済学の知見とそれに基づく著者の意見が記述されている。 ただ、数学が苦手な人への配慮から、数式による説明をすべてスキップしており、意見の根拠となる知見の導出過程が具体的にわかりづらい。 そのため、捻くれた読み方をすると「根拠の無い理論に踊らされることを警告しつつ、根拠の無い手法を提案する本」としてみなされかねない。 まあこの辺を言い出すと、経済学の教科書や学術論文以外の(またはこれらを含む)すべてを疑わなければならなくなり、きりがないのかもしれないけれど…… 数式による記述がないメリットとして、読み物としてとても読みやすく、(内容を無根拠に信じるという前提にたてば)投資に対する明快なアドバイスが書かれており、思わず実践してみたくなるほど興味深い。 また、確定拠出型年金に対するある種の最適戦略を与えており、就職後役立つ知識が得られたと思う。 以前、新保の『金融商品とどうつき合うか―仕組みとリスク (岩波新書)』を読んだが、重複する箇所も多少あった。 比較的原理から説明してくれる本が『金融商品と〜』であり、より実践的なアドバイスが書かれているのが本書ということになると思う。

May 16, 2015

カルマンフィルタの更新式まとめ

##カルマンフィルタとは 「離散時間システムの出力から、システムの状態を最小二乗の意味で推定する」 ##問題設定 今回はもっとも簡単な線形時不変の方程式 $ x(k+1)= A x(k) + Bu(k) + Gw(k)$ $ y(k) = Cx(k) + v(k)$ を考える。 ここで、$w(k),v(k)$はそれぞれ白色ガウスノイズであることを仮定し、その平均と共分散は $E[w(k)] = E[(v_k)] = 0$ $E[w(k)w(k)^T] = Q, E[v(k)v(k)^T] = R$ であるとする。$w(k)$と$v(k)$の間に相関はないものとする。 初期値もガウスであるとし、その平均と分散は $E[x(0)] = \bar x(0)$ $E[(x(0)-\bar x(0))(x(0)-\bar x(0))^T] = \Sigma_0$ であるとする。 今、時刻$k-1$までの入力${u(0),\ldots,u(k-1)}$(以後$U_0^{k-1}$と表示)と時刻$k$までの出力${y(1),\ldots,y(k)}$(以後$Y_1^{k}$と表示)がわかっているとする。 ###問題 $\hat x(k) = \text{argmin} E[(x(k)-\hat x(k))^T(x(k)-\hat x(k))]$ を満たす$\hat x(k)$を求めよ。 ##アイデア 上記の問題は、右辺を計算することで $\hat x(k) = \text{argmin} E[(x(k)-\hat x(k))^T(x(k)-\hat x(k)) | Y_1^k, U_0^{k-1}]$ と書き換えられる。 これを更に変形していくと、 $\hat x(k) = E[x(k)|Y_1^k, U_0^{k-1}]$...

April 12, 2015

アイルランドのSIM事情

アイルランドに来て3日経ちました。 入国後まずはじめにしたことが、通信環境を整えること。 アイルランドには主にVodafone, Meteor, 3(Three)などのキャリア会社がありますが、今回はMeteorのSIMカードを購入しました。 購入したのは月に15GBのデータ通信が使えるプランで、価格はなんと14.99€(日本円でおよそ2000円)。 ただしこちらは3Gの通信帯域のみでのプランです。 購入の際には、パスポートを提示したうえで、契約書にサインを求められます。 渡されたSIMを挿入し、付属のカードに書かれているPINコードを入力すれば、すぐに使うことが出来ました。 こちらはプリペイドタイプのSIMではなく、月ごとにカードを通して引き落としされる契約なので、解約の際にはショップに出向く必要があるそうです。 また、僕の場合は日本で購入してきたモバイルルータを使う都合、電話環境を整えられなかったのですが、必要な方には、3(Three)が提供している、月15GBのデータ通信に電話もかけ放題のプランをおすすめします。 こちらも価格は月に20€でとてもお買い得な上に、4G/LTEの帯域が使用可能です。 契約もプリペイドタイプなのでとても安心で、非の打ち所がありません。 アイルランドのSIM事情についてはこちらのページが詳しいようです(ただし、今回僕が契約したプランはこちらのサイトには掲載されていませんでした)。 キャリアが提供するプランは結構日々変動するみたいなので、アイルランドに来られる際には、ぜひ最寄りのショップに立ち寄ってみることをおすすめします。

April 7, 2015