技術者として生きていく上で、複数の専門をもつというのは、重要な戦略になることを最近実感している。
例えば、僕の専門は制御工学であり、学部・大学院とともに、紙とペンを用いて理論寄りのテーマを研究してきた。
研究を通じて統計学や最適化、授業を通じて機械工学や電気・電子工学などを幅広く学んではきたが、それでも「専門」として答えられる分野は制御くらいしかない。
翻って今の上司を見てみると、航空工学と統計学のダブルディグリーで修士号を取得後、博士では航空機に対する状態推定と制御に関する研究をしている。
さらにソフトウェアの開発にも精通していて、趣味としてモバイルアプリの開発もおこなうという多才ぶりだ。
「ある分野で10人に1人の人材である人が、別の分野でも10人に1人の人材であるならば、両分野に関連する領域では100人に1人の逸材であることを意味する」という推論は、キャリアを考える上で重要な考え方のように思われる。
ここで大事なのは、やたら何にでも手を出すのではなく、相性のよい分野を選択しリソースを割くことだろう。
さもなくば、分野同士の共通領域がなくなってしまい、活躍できるフィールドも限られてしまうからだ。
また、あまりにありがちな組み合わせを選択するのも、よい戦略とは言えない。
なぜならば、上記の推論は、両分野に属する人材が独立に分布しているという仮定にもとづいているからだ。
例えば機械と電気は切っても切れない関係にあり、その両方を学ぶ人は多いだろう。
そのため、両分野それぞれで10人に1人の人材になれたとしても、それらをまたがる領域で100人に1人の人材になれるとは限らない。
互いに重複する分野のなかでも、少し意外性があるが実は相性がよい、そういった領域を選択するのがいい。
現代のものづくりの傾向を考えてみると、大規模で高度なシステムほど、コストやリスク削減のために、ソフトウェアによるモデルベースでの開発が重要になってきている。 このため、技術者志望の僕にとって、プログラミングやデータベース管理などに精通しておくことは、アドバンテージになるだろう。 しかしこれは意外でも何でもない。
中央大学の竹内先生が仰るとおり、これからの理系の研究者に必要なのは文系力であるということを鑑みれば、経営やマネジメントを学ぶのも意義深いだろう。
「専門」というテーマからは少し離れるが、語学は絶対に身につけたほうがいい。 世界的に技術者は不足しており、使える言語が増えるほど、働く領域が増えるのは言うまでもないからだ。 実際僕自身、ヨーロッパに来てからというもの、どうしてもっと早く英語を勉強して来なかったのかと毎日のように後悔している。 しかしながら、ポジティブに考えれば「日本語ができる技術者」というのは世界的にも稀だという見方ができ、これが現在僕が日本で働くことを希望する理由の一つになっている。
さて、ここ数日考えたことを適当に書き散らした。 いずれにせよ、終身雇用制度が崩れ、スキル無くして生き残るのは難しい今、リストラに怯えるような毎日を送らないためにも、自主的に勉強する習慣は常に身につけておきたい。