概要
本格的就活シーズンの到来に先駆け,少し古い話になるが,今年の夏に三菱重工のインターンに参加したことについて備忘録を残す. おそらく社外秘につき触れてはいけない点が多々あるため,特に技術的な点については触れないことにする.
なぜ三菱重工なのか
僕は制御工学を研究している. 制御工学は,対象が特定の形式でモデル化されていれば,(そのスケールに関わらず)それが制御可能であるか,可能であればどうすれば制御できるか,などをある程度体系的に取り扱う事ができる. 僕はこの分野横断的な要素に惹かれており,制御工学がどの程度大きな対象に対象にまで応用されているかに興味をもっていた. 重工系の企業を選んだのはこれが理由. そのなかで,三菱重工を選んだのは,単に自分のなかでもっとも有名な企業だったためと言ってしまってよい.
あとはざっくりと社会人ってどういう感じなのか知りたかった.
研修内容
2週間,原子力発電所の運転訓練用シミュレータの保守作業にかかわらせてもらった. 原子力プラントの運転には高度な技術が必要であり,実際の発電所の近くには,訓練のための実機そっくりのプラントシミュレータが設置されている. シミュレータは,(制御的視点からみれば)プラント部とコントローラ部からなっている. プラントの動特性はある程度数理的にモデル化されており,また,コントローラは実際に用いられているロジックを移植することで構成されていた. 僕が携わったのは,制御器のなかの一部のロジックの変更作業.
所感
#社会にでることについて
まず感じたことは,「社会人思ったより大変」ということ.
具体的には,毎日早起きして,満員電車に乗って,一日同じ机の上で作業し,夜に帰宅し,つぎの日を迎えるというサイクルははじめ地獄のように思えた. 天下に名を轟かせる大企業ですら,毎日朝から晩まで仕事しなくちゃいけないんだという考えてみたら当たり前の事実が,当時の僕を驚かせた. 裏を返せば,もっと待遇の悪い(残業漬け,土日出社など)会社なんてごまんとあるはずで,この辺は自分が順応していくしかないと思った.
また,自分を苦しめた要因の一つが「サイクルの単調さ」にあったように思うので,就職するうえではある程度刺激的で流動的な仕事ができたらいいと感じた. 一方で安定を求めているのも確かで,バランスを考えていく必要を感じた.
#学校で学んだこととの関わりについて
原子力にはさほど興味がなかったが,巨大さの象徴でもある発電プラントのなかで,制御工学がどの程度関わっているかということを知ることができた. 「じゃあどの程度か」と訊かれたら「ほんの一部」という答えになる. この辺をあまり詳しく書くと怒られるかもしれないが,大学院で学ぶ高度な制御理論は殆ど登場せず,はじめ少しがっかりした.
しかしながら,配属先の部長さんの話を聞くうちに,目から鱗が落ちていくような気がした. というのも,彼は学生のとき僕と同じく理論ベースの制御を研究し,就職時に学問と実際とのギャップに落胆したとのこと. けれども,業務を通じて,「自分の専門」への固執が,ある意味で世界を狭めていたことに気づき,以後より広い目線を獲得していくことにつながった,という趣旨の話をしてくださった.
このエピソード以外にも,貴重な時間を割いてたくさん含蓄ある話を聞かせてもらい,少し大袈裟かもしれないが「この人の下でなら仕事をしたい」と思えるくらい,魅力を感じた.
12月現在,自分の研究に対しての素養が十分でないとわかりつつある今,就職は人で決めたいと思う理由のひとつになっている.
今後どうするか
インターンで得る情報がかなり有益であることに気づいたので,できれば別の会社を訪問し,比較検討したいと考えている.