ヨーロッパに来て半年になるので、つらつらと思うことを書き残しておく。
#研修内容について
今年度は、ヴルカヌス・プログラムという奨学金付きのインターンシッププログラムに参加しており、ベルギーにあるシーメンスのソフトウェア部門で航空機の制御に関わる仕事をしている。
航空機への制御を学ぶためには、航空機自体がどのような動特性を持っているかを知らなければならないが、僕にはその知識が全くなかったため、研修は航空力学を勉強することから始まった。
物理の知識がラグランジュ方程式くらいで止まっている僕にとって、航空力学の理論は難しく感じられ、これまでのところとてもじゃないが全てを理解したとは言いがたい。 先日edXでMITxから提供されている、Introduction to Aerodynamicsという講義を見つけたので、是非受講しようと思っている。
話がそれるが、最近こういったオンラインの講義を受講するのにハマっており、先日は機械学習の講義を受け終えた。 各講義のクオリティはとても高く、この先大学のもつ教育機関としての側面は、こうしたサービスの登場により変わっていくんじゃないかと思う。
それはさておき、まだ航空機についての知識は足りていないものの、最近はようやく制御シミュレーションに取り掛かり始めている。 当然だが制御工学は自分の専門であるので、以前にもまして興味をもって取り組むことができている。 僕がこれまで学び、実装したことのある制御法は、その殆どが基礎的な線形制御法に過ぎなかったため (僕の研究内容は解析がメインだったと言い訳をしておく) 、モデル追従制御や入出力線形化など、今まで詳しく知らなかった制御理論を学べたのは嬉しい誤算だった。
制御理論を航空機にどう実装するかについても、上司からいろいろと面白い話を聞けた。
例えば、高度や速度などの飛行状態によって動特性が変わる航空機では、平衡点も変わるため、制御のための線形化はその都度おこなう必要がある。
しかしながら、線形化のためには平衡点を求めなくてはならず、計算には時間がかかる。
このため、いくつかの航空機では、予め数百もの状態の組み合わせに対する線形化モデル、またはモデルに対する制御器のパラメータを計算して、メモリに格納しておき、それを呼び出し、補完しながら制御するのだそうだ。
実はゲインスケジュール制御は航空分野から生まれた制御法であるらしく、こうした背景があったことを考えれば納得できる。
#ベルギーについて
ここルーヴェンは、ベルギーで一番大きな大学街として知られる町だ。
にもかかわらず、深夜に開いているコンビニなどはなく、日曜はどこのお店も開いてない。
そのため、日本で暮らす感覚でいると、休みの日に食べるものがなくて詰む。
アイルランドでも同様の傾向は見られたが、向こうでは首都ダブリンに滞在していたためか、中心部は日曜も賑わっており、あまり不便しなかった。
はじめは暮らしにくい町だと感じたものだが、順応してきた今では、むしろ働く側に優しい仕組みなのかもしれないと思うに至っている。
実際、僕が働く会社では、仕事はどんなに遅くとも19:00で切り上げられるし、人々は日曜にピクニックやスポーツを思う存分楽しんでいるように見える。
不便さを受け入れることで享受できる暮らしのゆとりと、際限なく働くことで経済を循環させる資本主義の宿命。 世の中にはこうしたトレードオフが無数にあることに気づく。
ところで、シーメンスでは様々な国から来た人が働いており、僕のようなアジア人も少なからず見かける。
観測範囲ではイタリア人が最も多く、オランダ人、フランス人、中国人、インド人、日本人や韓国人、と続く。
ドイツ人を見かけないのは、おそらくだが、ドイツ人の労働環境はこちらより優れているのでわざわざ他国に出向く必要はないという理由によるのだろう。
彼らは皆、自国の人と話すときは自国語で、他国の人と話すときは英語でコミュニケーションをする。
語学学校の時と違い、彼らが全く言葉に詰まることなく、母国語のように英語を話す様には、はじめ驚いた。
また、町を歩いてみても、アジア人を多く見かけるし、僕のアパートには大学に通うためにスロベニアからやってきた学生が住んでいる。
周囲を他国に囲まれている地理的要因、EUの本部を首都に抱える政治的要因などが、こうした国際的な環境の形成を助けたのだろうか。
#今後について
正直、4月からここまであっという間だった。 良くも悪くも研究室とは違い、具体的な目標が課せられない毎日であり、自分で明確な目標をもつ必要性を日々感じている。 残り半年、無為に過ごして後悔の残らないよう、自戒しつつ過ごしていきたい。